RC造2階建てのオフィスへのリノベーション。
場所は愛知県名古屋市東部の歓楽街近く、商店街通り裏手にある。周辺は個人経営の小さな飲食店や商店の点在する住宅地である一方、大学病院や高層マンション・商業施設からなる複合開発エリアにも近接し多様な表情を持つ地域である。
建物は1フロア9坪程度が敷地境界いっぱいに建てられていて、正面は幅員6mの道路に、裏手はコインパーキングをはさんで商店街通りに面する。RCラーメン構造の外壁はALC、鉄骨胴縁+サイディングによる乾式工法、コンクリートブロック積、一部RC造が混在する場当たり的なつくりになっている。1階通り側から階段を上がり2階裏手側の窓からは商店街通りや名古屋市の中心街方面に抜ける風景がよく感じられる。通りから街の風景へと続く体験を建築にすることにした。
通りに面した1階の乾式の外壁とサッシは撤去して間口一杯を開口にした。2階裏手のサッシはガラスを透明ガラスに交換し、1階の通りから2階裏手の街の風景を階段を通じて視覚的につなげた。
2階天井はアルミガラスクロス貼りグラスウールで断熱補強、2階と1階の通り際までつながる階段の壁・天井は、断熱材仕上と同じくアルミ層を形成するシルバー塗装で仕上げ、反射により両側の外部の光や街の雰囲気を室内に引き込んだ。さらに、階段からそのまま内部をめくって裏返すように、通りに面した外壁面もアルミ塗料で仕上げ、内部で行った操作をファサードにも連関させた。
2階には最低限の什器を設えた。安価で汎用性の高い30㎜×40㎜杉胴縁材とラワンベニヤで構成し、既存の構造フレーム、木製フレームの什器、本や資料などの氾濫するモノたちと、その奥に透ける統一性のない既存の外壁の肌理を、雑多な街の風景に並べた。1階には通りに面した空間をくるっと円弧状に包むようにカーテンを掛けて、通りのポケットのような場所をつくった。
正面の通りと裏側に広がる街の風景をつなげることを手掛かりに、加える所作を既存や先手に連関させていくことで建築の全体性を獲得させた。

 所在地   :愛知県名古屋市
 用途    :オフィス
 構造/規模 :RC造/地上2階
 施工    :吉富工務店株式会社
 撮影    :植村崇史